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2010.5.10

トマソン選手と少年

南蔵院の林覚乗和尚の心に響く言葉より…

これは、新聞に掲載された話です。

ワールドカップが日本で開催された時、
和歌山県にデンマークのチームが合宿した。
他の国では、戦術がばれるからと練習は非公開だったが、
キャンプ地を提供してくれた和歌山の人たちが喜ぶならと、
デンマークのオルセン監督は練習を公開した。

そして、地元の人が喜ぶことの方が試合に勝つことより大事と、
練習では少年とのサッカーの交流をしたり、
終わってから握手会などをしていた。

デンマークチームには、
トマソンという日本の小野選手とチームメートだった有名な選手がいる。
そんなある日の握手会の時、いつものように長い列ができていた。

ある少年がトマソン選手の前に立ったが、何も言わずにモジモジしていた。
トマソン選手の方が気になって、「どうしたの?」と聞いた。
すると少年が一枚の紙切れを出して、トマソン選手に渡した。
それは、学校の先生に書いてもらった英語の手紙だった。
その手紙には、こう書いてあった。

「ボクは小さいころに、病気にかかって
耳と口が不自由です。耳は聞こえません。話すこともできません。
でも、サッカーは大好きです。
デンマークのトマソン選手が好きです。
頑張ってください」

それを見たトマソン選手はニッコリと笑って、少年に言った。
君は手話ができますか?と、手話で語りかけた。
しかし、少年はわからなかった。
手話は世界共通ではないからだ。

そこで、トマソン選手は通訳に
「彼と筆談で話をしたいので手伝ってください」といい、
「後ろに並んでいる人たちにも、彼と話をする時間を少しください、
と断ってもらえませんか」と頼んだ。

そして少年との筆談が始まった。

「君はサッカーが好きですか?」

「はい。大好きです」

「そうですか。デンマークを応援してくださいね」

そこで不思議に思った少年が聞いた。
「あの、聞いていいですか?」

「トマソン選手はどうして手話ができるんですか?」

トマソン選手はこう言った。
「ボクにも君と同じ試練を持つ姉がいます。
彼女のためにボクは手話を覚えたんです」

「試練は君にとって辛いことだと思いますが、
同じように君の家族も、その試練を共有しています。
君は一人ぼっちじゃないという事を理解していますか?」
と優しく言った。

すると、少年は黙ってうなずいた。

「わかっているなら、オーケー。
誰にも辛いことはあります。君にもボクにも。
そして君のお母さんにも。
どうか、それを乗り越える勇気を持ってください」、と。

それをそばで聞いていた彼のお母さんは泣き崩れた。

そして、トマソン選手は少年にこう言った。
「ボクは今大会で1点を君のために必ずとります。
その姿を見た君がこれからの人生を頑張れるように
ボクは祈っています」

この言葉に、
「はい!応援します。どうか頑張ってください」
と少年は言って会場をあとにした。

トマソン選手は、少年との約束を守り、1点どころか、なんと4点をあげた。

結局は、ベッカムのいるイギリスに負けてしまったが、
帰る前の日に、和歌山の人たちはデンマークの選手が大好きになっていたから、
さよならパーティーを開催した。

その会場で、あの少年をトマソン選手はすぐに見つけ、自分のところに少年を呼んだ。

世界の有名な一流選手が、一人の無名な少年を、一人の人間として大切に扱い、
「せっかく応援してくれたのに負けてゴメンナサイ」と謝った。

少年は、
「負けたけど、とてもカッコよかったです。
約束どおり点を獲ってくれて、ボクはとても嬉しかったです」と筆談で渡した。

あくる日、国に帰らなければならないトマソン選手は、少年にこういった。

「ボクから君に言える言葉はこれが最後です。よく聞いてください」

「君には前にも言ったとおり、試練が与えられている。
それは神様が決めたことだから、今からは変えられない。
神様は君に試練を与えたけど、
君にも必ずゴールを決めるチャンスを神様はくれるはずです。
そのチャンスを逃さず、ちゃんとゴールを決めてくださいね」
とトマソン選手は最高の笑顔で話し、仲良く写真に納まった。

『おかげさま』林覚乗講演CDより


何年か前の、ワールドカップの話だが、
いまでもこの実話は人の心を震わせ、胸をうつ。

和歌山の人たちと交流を深めたデンマークの選手達は、
和歌山の人たちに熱狂的なデンマークファンをつくったという。

デンマークは、北欧諸国のひとつだが、
人口は、約550万人で、広さは北海道の半分の小さな国だ。
その中のわずか何十人というサッカーの選手たちが、
デンマークの印象をすばらしくよくした。

当時、和歌山県では、ベッカムなどの有名な選手は知っていても、
デンマークのことを知っている人は少なく、
最初の頃、練習場の見学者も数百人しかいなかったという。

しかし、練習を公開でやったり、
地元サッカー少年団との交流ミニサッカーをしたりする姿勢が評判を呼び、
最後の頃には見学者は3000人をこえるようになったそうだ。

オルセン監督の、試合で勝つより、
キャンプ地の和歌山県の人に喜ばれることをする、
という考え方がデンマークの応援者を増やした。

外国でプレーをしたり、外国に住んで仕事をしている人は、
外交官でなくても、その国を代表し、
その国のイメージがその人によって作られる時がある。

その時の、オルセン監督や、トマソン選手が果たした役割は、
国の大使の何十倍の力に匹敵(ひってき)した。

心打つ暖かな行為は、国を超え、時代を超えて、人の胸に響く。

神様は、試練も与えるが、チャンスもくれる。
我々も、そのチャンスを逃さず、ゴールを決めたい。



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