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2018.5.5

パスポート


金美齢氏の心に響く言葉より…

私は2009年秋に、日本国籍を取得した。

この理由については、さんざんあちこちで語っているが、2008年の台湾総統選の民進党敗北がきっかけであった。

日本人として日本のパスポートを持った瞬間、私は国際社会に歓迎されるようになった。

日本のパスポートで渡航できる195ヵ国のうち、事前にビザ申請が必要な国はせいぜい60ヵ国あまり、つまり130ヵ国以上を事前のビザ申請なしで訪れることができる。

たとえ事前ビザ申請が必要だとしても、日本パスポート所持者に対する事前審査はさほど厳しくない。

パスポートコントロールを通過するさいも、日本パスポート所持者に対する各国のオフィサーの態度は心なしか丁寧で親しみにあふれている。

税関の荷物検査も、心なしか緩やかだ。

パスポート無し時代、中華民国パスポート時代を知っているだけに、私には日本パスポートは魔法のパスポート、パスポートにミシュランガイドがあるならば、三ツ星どころか五ツ星のパスポートに思えた。

これは、日本のもつ国際社会に対する国家イメージが極めて良好だからである。

先人たちが積み重ねてきた功績でもある。

日本人はそういう日本をもっと誇りに思うべきだろう。

私が無性に腹のたつことがあるとすれば、それは日本人なのに、国家を否定し、国旗や国歌を侮辱しながら、日本のパスポートで平然と海外に行き、日本国政府に身元を保証されていることが当然だと思っている人たちがいることである。

国家の庇護を受けながら、その国を否定するその手の人々は「私は世界市民、コスモポリタンだ」とうそぶき、国境があるから争いがあるのだ、とわけのわからない理想を掲げる。

しかし、国際社会というのは国家の集合体である。

いずれの国家にも属さない人間が国際社会に受け入れられるはずがない。

他国の侵略を受け、伝統的文化をないがしろにされ母語も定まぬ悲哀を一度も経験したことのない若い日本人が、「ほとんどの人は国を守るのは何となく当たり前だと思っている(と思う)。だけど本当にそうなのか?」といった疑問を本気で、訴えているのを聞くと、この国の未来に不安を感じてしかたがない。

もちろん、国家が国民の敵という国もあるだろう。

もし日本が本当にそのような国民の自由と基本的人権を弾圧するような圧政の国だと考え、本気で国家と闘うつもりであるなら、一度、そのパスポートを引き裂いて捨ててみるといい。

かつて中華民国の蒋介石独裁政権と闘っていた私が中華民国パスポートを引き裂いて捨てたように。

その覚悟もない人間が、国家に守られながら国家を否定する姿は、台湾人に生れた悲哀を知る人間からみれば、滑稽を超えて哀れを催す無知である。

『九十歳 美しく生きる (WAC BUNKO 267)』


豊かさにどっぷりつかり、与えられている幸せが当たり前となってしまうと、感謝がなくなる。

それは、この時代、この瞬間に日本に生れたという幸せ。

もし仮に、紛争地域や、独裁国家に生まれたとしたら、この日本がどれだけ天国のような国かわかる。

戦闘や爆撃あるいは投獄や拷問の恐怖にさらされない幸せ。

批判・非難や文句ばかり言う人間は、今ある幸せに気づいていない。

自分だけ安全なところにいて、相手を罵倒する人間の品性は卑(いや)しい。

今与えられている幸せに感謝できる人間でありたい。


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